
黄帝内径 52番目は刺禁論篇(しきんろん)です。
刺鍼してはならない時、誤刺してはいけない部位についてを教えてくれている。
最初、臓全体の場所や働きを知ったうえで、その気を乱さないように刺すべきです。
身体の左側は肺、身体表部は心、身体の深部は腎がそれぞれ関係している。
これらの精気を送るのは脾である。
胃はそれらに精気を送るために、水穀をあつめておく市場のようなもの。
胸には陽中の陽であり血を司る心と、陽中の陰であり気を主る肺がある。
背の第7椎の附近に心包がある。
もし、心臓を直刺と一日で死ぬ。直刺したら必ず噯気が出る。
肝臓を直刺すると五日目に死ぬ。直刺するとうわごとを言いだす。
腎臓を直刺すると六日目に死ぬ。直刺すとクシャミをしだす。
肺臓を直刺すると三日目に死ぬ。直刺すると咳をしだす。
脾臓を直刺すと一〇日目に死ぬ。直刺すと噯気(おくび:ゲップ)をだす。
胆の腑を直刺すと一日半で死ぬ。直刺すと嘔吐しだす。
直刺とは、内臓に直接刺針することです。
深く入すれば内臓にあたります。
だから、刺針は浅いのを原則とします。
皮、血脈、肌肉、筋、骨のある「外」の部分に刺入します。
◆注意して刺すべき場所、又は、刺針してはいけない場所について。
間違った刺針の為に現れる症状。
・足背の衛場穴附近を刺して、動脈から出血して止まらない時は死亡する。
・顔面に刺して、眼にいっている神経にあたると盲になる。
・脳戸穴を刺して脳に当ると即死する。
・舌下を刺して脈にあたり、出血多量で止まらない時は声がでなくなる。
・足背の脈を刺して内出血さすと腫れてくる。
・気衛穴を刺して内出血さすと、その部が腫れてくる。
・脊中を刺して髄にあたるとせむしになる。
・乳を刺して乳房に当たると腫れてその根底から腐ってくる。
・内股を刺して大動脈にあたり、出血が止まられない時は死ぬ。
・客主人穴を深く刺すと、耳が悪くなる。膝を刺して関節の津液が出てしまうとびっこになる。
・太陰肺経を刺して出血多量になると死ぬ。
・少陰腎経が虚している時、腎経に刺針して出血さすと、ますまず虚して言語障害を起こす。
・肘窩に刺して気があつまりすぎると屈伸できなくなる。
・下腹を深く刺すと、小便が出すぎて下腹が張ってくる。
・ふくらはぎを深く刺すと腫れて来る。
・まぶたの上を深く刺すと、涙が止まらなくなり、盲になることがある・・・・・げっ怖い。
・関節に刺して津液が出ると屈伸が困難になる・・・・・これも怖い。
以上の記述は、現代の解剖整理の常識から考えても理解できるもの・・・・そうなんだ。
もちろん、その部位に刺すと必ず悪化するものではないとの事。
深刺しを避けるのが一番いい。
常に心がけないさいと岐伯先生は2000年前に教えてくれています。
患者となる私たちはどうすればいいんだと思ってしまう。
解決策は一つ・・・・知識をもって、針灸の先生の品質を見抜く必要があると言う事。
次に記述されているのは古典医学の観点で書かれている。
気血水の考え方からすれば理解はできるとの事。
・泥酔いは刺すべからず、刺すと気を乱す・・・・当然だよね。
・大怒は刺すべからず、刺すと気が逆す。
・大労は刺すべからず・・・・・疲労困憊の事。
・新飽は刺すべからず・・・・満腹の事。
・大飢の人は刺すべからず。
・大渇(だいかつ:沢山渇(かわく)いている。
・大驚の人は刺すべからず。
以上のような状態は気が極端に変調しているので、刺してはなりません。
実際、少しの酒なら、針によって酔いはさめる。
ところが、大酔の人に刺すと、ますます宵が回って、そのまま診台の上で夕方まで眠った人がいたとの事。
過ぎたるは及ばざるがことし。
いずれにしても軽く、浅く刺すようにしましょうとの事です(笑)