五行説(ごぎょうせつ)とは、古代中国に端を発する自然哲学の思想。
万物は木・火・土・金・水の5種類の元素からなるという説です。
また、5種類の元素は「互いに影響を与え合い、その生滅盛衰によって天地万物が変化し、循環する」という考えが根底に存在しています。
古代ギリシア・ローマの四大元素説(四元素説)と類比される考え方です。
五行説は、夏の創始者「禹(う)」が発案し、戦国時代の陰陽家騶衍(すうえん)が陰陽五行として完成させられたものと云われています。
各王朝の変遷説:五行の推移に見たてて、次のように説いています。
●五行相生
木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は木を生じるとする。
これに王朝の変遷を組み合わせて、堯[ぎょう](火)・舜[しゅん](土)・禹[う](金)・殷[いん](水)・周[しゅう](木)・漢[かん](火)と変遷したという。(春秋繁露)
●五行相剋
水は火に勝ち、火は金に勝ち、金は木に勝ち、木は土に勝ち、土は水に勝つ。
これに王朝の変遷を当てはめて 、周は火徳、秦は水徳、漢は土徳をもって、それぞれの王朝をひらいたと云われています。
惑星説:当時中国では5つの惑星が観測されおり、当時から知られていた惑星、水星・金星・火星・木星・土星の運行は複雑で、大変不可思議なもと思われていた。その運行と地上の百般の現象と、何らかの関係があるのではないだろうかと考えられ、それが深化していった。
すなわち、天地間の総ては木火土金水の五つの要素で成り立っており、自然界・人間社会の諸現象など森羅万象の総てが、五惑星の木・火・土・金・水の精気の消長盛衰によって影響されるというものです。
五材説:万物を形成している五種の材料からきたという説。
五材とは、古代の人の生活に必要な五つの財、すなわち水、火に始まって、木・金に及び、その基礎となる土に終わるというもので、これは『書経』の「洪範篇」に説明されているものです。
五行の「行」は、もと巡る・運行する意であった。また「五」は、人間の片手の指が五本あるところから生じたと考えられている。すなわち、「五行」は五つの巡るものという意味である。
このうち一つをいうときは一行、二つは五行となる。
五行説によると、五行(五氣)はそれぞれ次のような性質を持っている。
五行(五氣) |
性質 |
木 |
木の花や葉が幹の上をおおっている立ち木が原意。
樹木生長発育する様子を表し、春の象徴です。 |
火 |
光り輝く炎が原意。 火の如く灼熱の性質を表し、真夏の象徴です。 |
土 |
植物の芽が地中から吐き出されるように発芽する形が原意。
万物を育成・保護する性質を表し、四季の移り変わりの象徴です。 |
金 |
土中にある光り輝くもの、鉱物・金属が原意。 金属の如く冷徹・堅固・確実な性格を表し、秋の象徴です。 |
水 |
わき出て流れる水が原意。 生命の泉であり、体内と霊性を兼ね備える性質を表し、冬の象徴です。 |